
2026年9月、SENKO CUPに出場するTeam USAのジュニア選手たちとともに、日本を訪れました。
私は現在、アメリカ・カリフォルニア州でテニスコーチとして活動しながら、SENKO CUP USAのTournament Directorとして、アメリカでの予選大会の運営から、日本大会へ出場する選手たちの引率までを担当しています。
毎年この遠征を終えるたびに、強く感じることがあります。 それは、選手たちが必ずと言っていいほど成長してアメリカへ帰っていくということです。
もちろん、テニスの大会ですから、試合に勝つこと、良いプレーをすることは大切です。 しかし、海外遠征で選手たちが学ぶことは、それだけではありません。 むしろ私が毎年大きな変化を感じるのは、コートの外での部分です。
海外に来ると、まず「自分のことは自分でやる」という場面が増えていきます。 例えば、自分のウェアを洗濯すること。 必要な書類を自分で確認して記入すること。 自分の荷物を管理し、翌日の予定を確認して準備すること。
普段であれば、保護者がやってくれていたこともあると思います。 しかし遠征中は、それを少しずつ自分たちでやるようになります。
最初はコーチに聞いていた選手が、数日後には自分で確認して準備をするようになる。 そうした小さな変化を毎年見ることができます。
保護者と一緒に日本へ来ている選手であっても同じです。 Team USAとして活動している時間は、基本的に集団行動です。 集合時間を守る。 チームのスケジュールに合わせて行動する。 自分の都合だけではなく、周りの選手のことも考える。 一人が遅れれば、チーム全体が遅れます。 一人の行動が、ほかの選手やスタッフにも影響します。 そうした経験を繰り返す中で、選手たちは少しずつ「自分一人で来ているのではない」ということを理解していきます。
そして、もう一つ大きな変化があります。 「自分たちはアメリカを代表してここに来ている」 という意識です。
最初からすべての選手が、その意味を十分に理解しているわけではありません。 しかし、Team USAのウェアを着て、日本やほかの国・地域の選手たちと試合をし、同じ会場で過ごしているうちに、自分たちの行動も見られているということを意識するようになります。
挨拶をする。 時間を守る。 大会関係者や対戦相手に敬意を持って接する。 ホテルや会場では周囲に迷惑をかけないようにする。 そして、 「アメリカの代表として恥ずかしくない行動をしよう」 という意識を持つ選手が、遠征の日数を重ねるごとに増えていきます。 これは、普段のテニスレッスンだけではなかなか教えることのできないものだと思います。
海外へ出て、普段とは違う環境の中で生活し、いろいろな国の選手たちと同じ場所で過ごす。 その経験そのものが、子どもたちを少しずつ成長させていきます。
もちろん大会ですから、勝った選手もいれば、負けた選手もいます。 思い通りの結果を出せた選手もいれば、悔しい思いをして帰る選手もいます。 でも、海外遠征の成果は、試合のスコアだけでは測れません。
遠征を終えてアメリカへ帰る時、 自分でできることが一つ増えている。 周りを見ながら行動できるようになっている。 チームの一員として行動する意味を少し理解している。 自分が代表として来ているという責任を少し感じるようになっている。 そうした変化も、海外遠征で得られる大切な成果だと思っています。
そして今回、アメリカの選手たちを日本へ連れてきながら、Kids Tennisが長年行ってきた活動についても改めて考えました。
日本の子どもたちが海外へ出て、世界の選手と試合をすること。 アメリカの子どもたちが日本へ来て、日本の選手や文化に触れること。 向かう方向は違っても、そこにある意味は同じだと思います。
テニスを通して、自分がこれまで知らなかった世界を見ること。 違う国の人と出会うこと。 自分とは違う考え方や文化に触れること。 そして、その中で少しずつ自分で考え、自分で行動できるようになること。 すべてのジュニア選手が、将来プロテニス選手になるわけではありません。 しかし、ジュニア時代にテニスをしていたからこそ海外へ行けたこと、世界の選手と同じコートに立てたこと、違う国に友達ができたことは、その後も長く残る経験になると思います。 10年後、20年後には、その時の試合のスコアは忘れているかもしれません。 それでも、 「あの時、テニスをしていたから世界を見ることができた」 という記憶は残っているのではないでしょうか。
テニスは、勝敗を競うスポーツです。 でも同時に、子どもたちを世界へ連れていってくれるものでもあります。
これからも、テニスを通して子どもたちが新しい世界に触れ、さまざまな経験をし、少しずつ成長していける。 そんな機会を作っていきたいと思っています。
